フランス政府・建築と遺産のメディアテーク:要塞編

古写真の作り方を知りたい、といろんな人に言っていたら、国立文化財学校(Institut National du Patrimoine,通称INP)の研修に参加させてもらえることになりました。三週間にわたる研修なのですが、一週目はフランス政府・建築と遺産のメディアテーク(Médiathèque de l'architecture et du patrimoine)が会場で、パリから2時間の郊外にある古い要塞を改装したところにありました。フランス政府がやっている研修ですが、日本人が受けるのは初めてらしいので、書き残しておいたほうがいいかと思い筆をとりました。

まずは研修場所にたどりつくまでが大変だったのでその話から。
研修の朝は6時に起きて一日数本の「プラハ行き」のバスに乗り、降りたところで人に道をきいて歩くこと20分、で着いたのはこういう場所でした。


文化・通信省の立て看板的なものがありますが、道はボロボロ。
そのまま進むと警備室があり、身分証を預けてバッヂをもらって中に入るとそこは要塞。

Fort de St. Cyrといって、普仏戦争後につくられた要塞だそうです。1874-1878と書いてありますが、1870-1871年普仏戦争でフランスが負けたあと、プロシアがまた攻めてきた時に備えてパリを取り囲むようにして造られた要塞の一つ、らしいです。パリ郊外南側の要塞で、ヴェルサイユのそばにあります。けっきょくその後ドイツは北から攻めてきたので使われることはなかった、と。


左は映画部門、右は写真部門。
映画部門というのはDépot légalといって、公開されたすべての映画がここに1コピーずつ置いてある、という納本制度の映画版だそうです。湿気とか大丈夫なんでしょうか。写真と版画にもその制度がありましたがそれはいま全部国立図書館BNF)の写真版画部門に。


看板も何もないのですが、それらしきドアを開くと受付が。しかし誰もいない…。
呼び鈴を10回くらい押してやっと奥のドアが開き、いよいよ中に入るとそこは延々と事務所。要塞の長い廊下を延々と歩いても誰もおらず、やっと誰かみつけたと思ったらみんなコーヒーを飲んで寛いでいて…ちょうど休憩時間なようでした。

そうしてようやくラボに到着。ここで古写真研修の第一週「鶏卵紙・ソルトプリント」の実習がはじまります。(つづく)