ピアノと物の怪、そしてクラウス・ノミ再臨―Kloing!,Olga Neuwirth,Paris Garnier

パリのオペラ座でめずらしい公演をみてきました。


前半は、自動演奏ピアノ→後半はクラウス・ノミへのオマージュでした。
自動演奏ピアノを紹介する、以下みたいな(じっさいに見せられたのは1905年製の自動ピアノでした)映像が最初に上映されて、

そうかピアノロールってパンチングシートそっくりだなあ、すごいなあ、と思ってきいていると、ステージ上でもピアノの演奏が始まって、それがうまい具合に音が繋がっていて巧かったです。さらにそのピアノがMIDIピアノになっているので、ピアニストが演奏しているのに関係ない鍵盤が勝手に動いて曲をめちゃくちゃにするというか、そもそもの曲があまり曲らしくないのでひたすら不協和音が奏でられるのですが、もとはと言えば「トム&ジェリー」のこの動画にインスパイアされたようです。

さらにその元はミッキーのこの映像と思われ。

ミッキー版のほうが、ピアノという「モノ」自体が意志をもっていて、トム&ジェリーのほうはピアノはわりと操作されるがままというか、「物の怪」感が薄い気がします。「モノ」が意志を持つのって要は「物の怪」ということではないかと思い。というか、トム&ジェリーのジェリーの方が「物の怪」の代理として機能しているのかもしれません。
ピアノと物の怪、といえば最近はMIDIピアノを喋らせるこんな試みもあるようです。

後半のクラウス・ノミ再演、は、オーケストラとオペラ歌手が出てきて、映像を背景にひたすらノミさんの名曲を歌いました。周りにいる、団塊の世代くらいの観客がノリノリでした。



わたしはリアルタイムで聴いていたわけではないですが、戸川純やニナ・ハーゲンと同じラインで神保町のジャニスで借りて聴きまくっていたのでとてもわくわくしました。というか、東京で一人で聴いていたものが、オペラ座を満席にするものだったのだ、というのが新鮮な驚きでした。
CDで聴いたのと比べ、今回の演奏は不協和音がちでまあ、それがOlgaさんの解釈なのかもしれません。彼女のサイトに、上に貼付けた3曲目のと同じ曲目が聴けるようになっているのですが、たぶんかなり違う、と思います。これがシメの曲だったのですが、ジュディー・ガーラントで締めくくるあたりにもこだわりを感じます(ノミもガーラントホモセクシュアルだった)。

公演の前半と後半はたぶん全然関係ないのですが、前半の自動演奏ピアノのあとだとどうしても、ノミっぽい服を着た歌手の人が自動演奏的に見えます。なんというか、曲によっては映像に歌詞が入っていてカラオケぽかったのですが、ほんとうにカラオケぽかったとしても決してイヤな意味ではなく、クラウス・ノミを再臨させたかったんだな、という感じでした。
そういえばこないだ函館に行ったときに、「北島三郎記念館」に3Dカラオケなるものがあって、3D映像のサブちゃんと「共演」できるらしいのですが、この写真の亡霊ぽさもさることながら、まだ本人が亡くなる前からもうあたかも亡霊になって再臨しているようであると思ったのでした。

ともあれそんなこんなでオペラ座の近くでラーメン食べて帰りました。