レバノンの弗(ドル)


レバノン・フォト・フェアのときにつくった作品"One Lebanese Dollar"が、手元にないのでもう一度作ってみました。ドル札の片面を紙ヤスリでこすって「白紙」にもどし、そこにレバノンの国章・レバノン杉を印刷してあります。
レバノンは通貨としてはレバノンリーヴルを使っているのですが、じつはドルと二本立てで使われていて、街中でふつうにドルでお買い物ができます。1ドル=1500レバノンリーヴルということになっていて、ドル紙幣を差し出すとおつりがレバノンリーヴルでもどってきます。レバノンイスラエルと関係がよくないので、イスラエルを支援しているアメリカとも微妙なのではないかと思っていたのですが、そんなアメリカの紙幣がふつうに使われているのは不思議なかんじがしました。
それで、というのも話が飛躍するようですが、ドルをレバノン化したいと思ってその片面を削ってレバノンの象徴・レバノン杉を印刷しました。国の象徴というと抽象的なようですが、レバノンではほんとうに街じゅうにこのレバノン杉をあしらった国旗とかポスターとかがいろんなところにあり、あまり政治色がないようなところにもたとえば駐車場の壁とかにもレバノン杉がさりげなく描いてあってレバノン杉はほんとうに愛されているんだなあということがわかります。古くはフェニキア人がレバノン杉で船をつくって地中海貿易をしていたころの栄光と、常緑樹である杉の木の縁起のよさで国旗にあしらわれているそうなのですが、じっさいのところはレバノン山脈の国立公園で保護されている二ヶ所の杉山以外はだいたい全滅していて街のなかでほんもののレバノン杉の木を目にすることはありません。木自体はないけれど、絵でばかり目にするという本末転倒なかんじも、うまくいえないけれどレバノンらしい気がしてレバノン杉のマークがますます気になるようになりました。
このレバノンの弗ももとの紙幣は紙パルプでできているので原材料は木材なわけですが、そこにレバノン杉の木の絵を印刷するというのもそういえば本末転倒です。