聞いた話3

友人Rはヨガが好きで、チベット人の僧侶「ラクパ」と友達である。ラクパは、山で修行をしたれっきとした僧なのだが、独立運動のときに中国軍に捕まって拷問とかいろんなひどい目にあわされたらしい。中国の拷問というのはほんとうにひどいらしく、濡れ衣とわかって解放されても後遺症で発狂する人とかも多くて、ラクパを狂人と思っている人もわりといる。
いろいろあってブリュッセルに流れ着いたラクパに友人Rはフランス語を教え、ラクパはチベット仏教を教えた。そのチベット仏教というのが(誤解をおそれずに言えば)いわゆる究極の自分探しのようなもので、ほんとうに徹底的に自分を探す。ラクパの場合、ラクパはラクパを探す。「ラクパはどこだ?」と大きな声を出して右手で左手をたたく。「ここか??」と言って大きな音が出るくらい頭をたたく。胸をたたく。腹をたたく。膝をたたく。…ということを全身にわたって繰返す。
友人Rの助けもあって、最近になってラクパはその全過程をフランス語でできるようになったらしい。