中国の豆腐

きょうは、なんてことのない一日なのですが、春になったので自転車に乗るのが気持ちいいだろう、と思ってすぐ近くにある中華街まで行ってきました。中華街なのでお店は当然ながらぜんぶ中国人が経営していて、中には日本食屋もあるけれどそれも当然ながら中国人経営で中の人には中国語で話しかけられます。置いてあるものも、醤油とかあるけれどそれは中国の醤油で、米もあるけれど中国の米で、笹団子とか吊るしてあるけれどそれは中国の笹団子で、豆腐もあるけれどそれは中国の豆腐なのでした。
どこが違うのか、と訊かれたら困るのですが、例えば豆腐にかんして言えばたぶん目の前に豆腐を出されてそれが中国のか日本のか訊かれたらすぐにわかるくらいの違いはある、くらいの違いです。パッケージに書いてある言葉で一発でわかると言えばそれまでですが、たぶんお皿に出しても八つ切りにしやすそうなサイズ感とか、いやしかし日本にも八つ切りサイズではない豆腐もあったな、とか言えばそれまでですが、食べれば確実に日本のものではない味がします。もっとも、豆腐というのは原材料的には豆乳とにがりから出来ていて、基本が同じであればあとは誤差と思ってもいいくらいのもののはずで、豆腐全体を100%としたら1%くらいの差異のはずなのですが、日本の豆腐にとってはそこがアイデンティティの拠り所となるわけです。
と言いつつ、それをキッチンに持って帰って同じ階のブラジル人とかに食べてもらうと「うまいうまい」ということになって、ようするに外人にとってはどうでもいい違いなわけですが、そう文句を言っている自分にとっても無いよりまし、というよりむしろその1%の差異を懐かしむためのよすがとして楽しんでいるところがあって、「でしょう、うまいでしょう」と言って美味しくいただくわけでした。