近況

うっかりしているうちに、だいぶ放置していました。久しぶりなので近況でも書こうと思います。
この冬コロンビアに連れていってくれた骨董屋が倒産の危機であるらしいことがわかり、で、このあとどうするのかとか話をしようとおもったら社長がモスクワに行ってしまい、いろいろと心配だけれど骨董屋の経営の心配をしても仕方ないからもっと自分の心配をしようと思っていきなり行くのをやめました。
思えば、パリに引越してから5ヶ月目というのに、まだ滞在許可証をもらっておらず、銀行口座も保険も住居手当もないので、まあいくら忙しかったからとはいえそれはひどいですよね、と思ってそういう苦手な事務手続きにとりかかりました。あと、もとはといえばパリには勉強をしに来ていたのであった、と、思って古写真の専門家に会いに行ったり、写真の材料を買いに行ったりなどしました。日本人のお友達に会ったり、オペラに行ったり(ワーグナーをみました)、京劇をみたり(玉三郎をみました)、パリに住んでいる日本人のアーティストのところにお邪魔したり、現地のお友達に街を案内してもらったり、などこれまでお誘いがあってもなかなか行けなかったものに積極的に言われるがままついていっているうちに、あっというまに2週間がたちました。
骨董屋とはメールのやりとりでなんとなく気まずくなっており、まあ会社が人を雇えない状況なのかもしれないけれど、辞めるにしても挨拶くらいしたほうが自分としては気持ちがいいので、さあ行くか、と思って行ってみたのが昨日。
いきなり行くのは気まずすぎるのでともかく、社長の旧同僚が経営しているギャラリーに行ってみて様子をみることにしました。そうしたら、案の定というかなんというか、ここの骨董屋はとてもクセがあって、天才肌だけど自分勝手なので早々に愛想をつかして離れていく人もいれば10年くらい経ってから戻ってくる人もいるし、我慢して学んで巣だっていく人もいる。当世、仕事というのは自分で勝ち取るものだから頑張って交渉してみなさい、とかなんとかおじさんに励まされてオフィスのある上階にのぼりました。
ひとまず、呼び鈴を押すかどうか迷って、押したら押したでもうこのまま帰ろうかとか思ってどぎまぎしているうちに社長がでてきました。すごい笑顔で歓迎されてひとまず拍子抜けし、そのまま社長室でこの仕事して欲しいんだけど、と既に用意されていた案件を渡されてさらに拍子抜けしました。それが、コロンビアのジャングルで展示したサルの絵を売るための冊子をつくる、という仕事で、まあ話はこれまで何度かしていたし、フランス語の作文の練習にもなるかな、と引き受けました。サルの絵、というのはサルを描いた絵ではなくてサルが描いた絵です。関連するドキュメンタリー映像があるから見ていきなさい、とDVDを渡され、アメリカ人の家で育てられて手話を覚えたサルのドキュメンタリー(長かった)を見せられて帰りました。
で、その次の日、つまり今日また行ったら映画関連の写真のオークションの準備があって、その専門家のおばさまと一日中写真の選定に取り組んで、案の定お宝がたくさんあってなかなか面白かったのですが、もう遅くなったので今日はここまで。
とかそんなかんじでじつに行き当りばったりではありますが元気です。

レバノンの弗(ドル)


レバノン・フォト・フェアのときにつくった作品"One Lebanese Dollar"が、手元にないのでもう一度作ってみました。ドル札の片面を紙ヤスリでこすって「白紙」にもどし、そこにレバノンの国章・レバノン杉を印刷してあります。
レバノンは通貨としてはレバノンリーヴルを使っているのですが、じつはドルと二本立てで使われていて、街中でふつうにドルでお買い物ができます。1ドル=1500レバノンリーヴルということになっていて、ドル紙幣を差し出すとおつりがレバノンリーヴルでもどってきます。レバノンイスラエルと関係がよくないので、イスラエルを支援しているアメリカとも微妙なのではないかと思っていたのですが、そんなアメリカの紙幣がふつうに使われているのは不思議なかんじがしました。
それで、というのも話が飛躍するようですが、ドルをレバノン化したいと思ってその片面を削ってレバノンの象徴・レバノン杉を印刷しました。国の象徴というと抽象的なようですが、レバノンではほんとうに街じゅうにこのレバノン杉をあしらった国旗とかポスターとかがいろんなところにあり、あまり政治色がないようなところにもたとえば駐車場の壁とかにもレバノン杉がさりげなく描いてあってレバノン杉はほんとうに愛されているんだなあということがわかります。古くはフェニキア人がレバノン杉で船をつくって地中海貿易をしていたころの栄光と、常緑樹である杉の木の縁起のよさで国旗にあしらわれているそうなのですが、じっさいのところはレバノン山脈の国立公園で保護されている二ヶ所の杉山以外はだいたい全滅していて街のなかでほんもののレバノン杉の木を目にすることはありません。木自体はないけれど、絵でばかり目にするという本末転倒なかんじも、うまくいえないけれどレバノンらしい気がしてレバノン杉のマークがますます気になるようになりました。
このレバノンの弗ももとの紙幣は紙パルプでできているので原材料は木材なわけですが、そこにレバノン杉の木の絵を印刷するというのもそういえば本末転倒です。

地下鉄のグーテンベルク

地下鉄にグーテンベルクのモザイクがありました。地下道はどこも入り組んでいて、だいたい白い壁で水が垂れていたりして洞窟ぽい感じがします。そこに毒々しい広告のポスターとか貼ってあって、さらに不穏です。乗換の駅とか表示が初心者にはわかりにくくて、でも立ち止まって地図を眺めたりなどしたら迷子丸出しなので、どこに続くのかもわからない洞窟道を早足で通ってさらに迷子になったり。ああ怖い。
ビビりすぎかもしれないけれど、そんな地下鉄で知った顔(グーテンベルク)を見てホッとしました。

額縁屋さんでキノコ狩り

キノコの季節です。キノコ狩りに行きたいです。代わりといっては何ですが、額縁屋さんでこんなのをみつけました。

100年前のキノコ版画です。

いろいろあります。お値段もお手頃。

一枚えらぶとなるとやはりこれかな…ということで探し出して買いました、ベニテングタケ。か、かわいい…。そのうち額装しようと思います。
100年前のものなのに安価なのは何なのだろうと思ったのですが、これらはぜんぶ元はといえばキノコ図鑑の一部だったそうで、要は額縁屋の主人が図鑑をどこかからか買って、バラして、こうやって一枚一枚マットをつけて売っているのだそうです。もとの本を見せてもらいましたが1910年出版とかでした。解剖図とか、職人図絵みたいなものもあって、それももとはぜんぶ本らしいです。逆にいえば、本についている挿絵はもとはといえば版画としてつくられているので、元に戻しただけともいえます。